平成29年度第3回ろう者学ランチトーク:ウォータ・ティールンさん(オランダ)

2017/05/23掲載

 5月16日(火)に第3回ろう者学ランチトークが行われました。今回は、グーグルジャパンで働くオランダ出身のろう者ウォータ・ティールンさんにお越しいただき、「IT企業に勤めるオランダ人ろう者のキャリア」というテーマで、お話しいただきました。

 おかげさまで、教員と学生、地域の方々を合わせて、51名の参加がありました。

 ウォータさんは、好きなものについて、まず、言語を取り上げました。中高生のときから母語以外の言語に興味を持ち、それまでも15言語を独学で学んだといいます。高校生の時は、漢字に興味を持ち中国語と日本語を勉強し、両方とも読み方は異なるので、同時進行で学ぶのには無理があると、途中で日本語に絞ったそうです。カタカナと漢字を書き、日本語と日本手話も完璧にこなせてしまうところから、彼がいかに勉強家であるかが伺えます。現在は、オランダ語、英語、日本語、オランダ手話、日本手話を身に付けており、さらに、ASLを勉強中だとのことです。前には、イギリスの手話も少しできたそうです。それから、猫が好きで、チェスをすることが趣味。チェスはスポーツだとお話しされていました。また、ドイツのビールを嗜むことも好きなのだそうです。

 ウォータさんは、脳膜炎により、2歳のときに失聴しました。オランダでは、4歳から小学校に入るのだそうで、4歳から13歳まで聾学校に通い、14歳からは一般校に通い、きこえる人と一緒に学びました。もともとコンピュータに関するもの、情報科学に興味があり、2つの大学を出て、学士をとっています。2つ目の大学は仕事しながら通ったのだそうです。論文も仕事内容に関するもので良いと認めていただき、卒業することができたといいます。母国で、PHPやJavaのプログラマーとして働きますが、学生の時に3週間滞在した日本への憧れを忘れることができなくて、日本への移住を決意します。就業ピザが切れてからも日本で働きたい思いが強くて、日本に来てから1年間は、就職活動の傍ら、オランダで勤めていた時の同じ職場の友人からインターネット経由で仕事をもらって生活をしていたのだそうです。日本での就職活動中、エントリーで出した履歴書に聴覚障害のことを書かず、面接まで伏せていたことがあったといいます。採用担当者から、前もって準備ができたから早めに言ってほしかったと聞かされた自身の経験から、必要なサポートを得たい場合にはやり取りの段階などで事前に伝えた方が良いだろうとアドバイスをしてくださいました。また、手話ができることを書いておくと相手が非常に興味を持ってくれるとのことでした。

 その後、IT関係の学士が生かせるところを中心に就職活動をし、現在のグーグルジャパンに決まったとのことです。金融関係にも興味があり、経済知識が必要とわかって、現在は計量経済学を勉強中だということです。

 学生からの質問では、言語についての内容が多く、特に手話を言語と思うかどうかについては、ウォータさんは、私の場合は口話もできるが、日本語になると読み取りが難しくなる、しかし、手話ではコミュニケーションがとれるという言語としての切り替えがあるから、普通に言語だと思うと回答してくださったのが印象的でした。その昔みんなが手話で話した島で知られる米国のマーサズ・ヴィンヤード島では、きこえる人同士の会話にきこえない人が来たら、コミュニケーション手段が手話に切り替わる場面があるということを聞いた、そういう場面でこそ、手話が言語であることの表れが強いのではないかなと思うという話には、なるほど…と思いました。

 さらには、オランダは福祉制度が進んでないが、きこえないことを伝えると、相手はすぐに理解して口を大きく開けて話そうとしてくれる、一方で日本は福祉制度が進んでいるのに、耳が聞こえないと伝えると困惑されるという一般人の対応の違いにはビックリしたというエピソードを取り上げて、日本とオランダの違いについてもお話しくださいました。障害者手帳による福祉サービスは、前はあったが、今は無くなってしまったのだそうです。

 最後に、オランダ手話をいくつか紹介していただきました。オランダには5つの聾学校があり、ウォータさんが通っていた聾学校は他の4校とは離れた郊外にあったため、異なる手話が教えられていたとのことです。表現が面白いものもありました。

 勉強家であるウォータさんの話を聞いて、刺激を受けた参加者もいることでしょう。積極的に様々な知識を得て多くを学び、充実した学生生活を送ってくださいね!

 参加した皆さん、ありがとうございました!!

過去のニュース一覧へ

トップページへ戻る