平成30年度第1回ろう者学ランチトーク:カォクン・タンティピシックンさん(タイ)

2018/05/16掲載

 5月10日(木)に第1回目のろう者学ランチトークが行われました。今回は、ダスキン・アジア太平洋障害者リーダー育成事業の第19期生であるタイ出身のカォクン・タンティピシックンさん(以下、ルーさん)にお越しいただき、タイのろう者の現状についてお話しいただきました。

 おかげさまで、教員と学生、地域の方々を合わせて、37名の参加がありました。

 ルーさんは、昨年9月に来日し、3ヶ月間日本語と日本手話言語の勉強をして、行政との交渉方法や情報アクセシビリティ、日本人の思考や行動様式について学ぶべく、6ヶ月間研修を受けてきました。自国のタイでは、ろう協会の事務局長をボランティアで務めています。仕事はエネルギー規制関連のスタッフ補佐をしていて、各家庭での電気使用量の管理をしているそうです。タイでは政府が電気使用量の抑制(管理)をして、各家庭で平等に電気が支給されるようにしているのだそうです。

 タイの聴覚障害者は、2017年の調査によると、33万人ほどで、そのうちろう協会に所属している者が12,321人います。ろう協会では、通訳派遣、字幕、ツアーとガイド、法に関することなど4つのサービスを提供しています。役員体制も紹介してくださいましたが、その会長が他の役員とはまた違った端正な顔立ちをしていたので、後で話を聞くとタイ人とイタリア人のハーフで、女性にモテるのだそうです。タイ人女性と結婚していました。(残念…!)

◆タイろう協会のHPはこちら

 タイのろう教育についても取り上げていただきました。聾学校は21校、特別支援学校が19校、その他にインクルーシブ教育を導入している学校があります。形態は日本の教育とほぼ変わらないのですが、大学は、教職課程またはろう者のための教育課程を導入しているところは5年制なのだそうです。情報保障のないところがほとんどで、ろう者のほとんどは十分な情報保障を受けられず、自分で仲間を頼ったり、先生に聞いたりということをしているとのことです。

 また、昨年の9月に行われたタイでの国際ろう者週間*のイベントの様子を映像で流してくださり、その大盛況ぶりにタイでは日本よりも手話言語やろう者について馴染みがあるように感じました。また、手話通訳サービスについては、ワークショップやセミナー、会議、警察署や裁判所、面接、病院、公的サービスにおいて手話通訳派遣の要望があれば、派遣があるのだそうです。日本と同じようにタイでも進んでいるようです。電話リレーサービスについて、日本でも最近、日本財団による手話フォン*の設置が進んでいますが、タイでは手話フォンのようなものは日本よりも早く設置されていました。設置しているろう学校もいくつかあるとのことです。連絡用のアプリも充実しており、GPS機能を使ったものやLINEのようなビデオ通話ができるチャット機能のものから緊急時用のビデオ通話アプリと難聴者用に音声から文字に変換する電話アプリまで4種類もあります。

 最後に、タイの手話言語について少し紹介していただきました。タイの指文字はギャローデット大学に留学していたタイ人女性Kamala Krairikshさん(1954年卒)が米国から帰国後、考案して広めたのだそうです。タイ手話言語もアメリカ手話言語(ASL)と同じもしくは似た表現も所々見られました。

 同じアジア圏とは思えないくらいに、タイでは日本よりも進んでいるところがあって参加者の中には驚いた方もいたのではないのでしょうか。今回の講演では取り上げられていませんでしたが、行政団体に障害者のエンパワメントを支援するところがあり、手話通訳者と行政による支援を希望する障害者が多数登録されています。行政がそんな支援まで担うとは日本では見られない光景ですよね。

 ルーさんの今後の活躍を応援しています!!
参加してくださった皆さん、ありがとうございました!!

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