平成27年度第1回ろう者学ランチトーク:仁宮浩さん&高橋雅尚さん

2015/04/28掲載

 4月22日(水)に第1回ろう者学ランチトークを行いました。

 今回は本学卒業生の仁宮浩さんと高橋雅尚さんにお越し頂きました。講演テーマは「国際ユニバーサルデザイン協議会での活動を通じて ~誰もがコミュニケーションできる世界を目指して~」です。お二人は本学の卒業生で、現在は大企業のデザイナーとして勤めておられます(※)。その先輩お二人に国際ユニバーサルデザイン協議会の活動についてお話し頂きました。
 ※仁宮さん(筑波技術短期大学第8期生)、【現職】富士ゼロックス株式会社
 ※高橋さん(筑波技術短期大学第2期生)、【現職】株式会社リコー

 おかげさまで教職員・学生合わせて40名の参加がありました。

 まずはユニバーサルデザインとは「すべての人々に対し、その年齢や能力の違いに関わらず、大きな改造をすることなく、また特殊な物でもなく、可能な限り最大限に使いやすい製品や環境をデザインすること」であると説明して頂きました。

 また、ユニバーサルデザインの標準化の推進に伴い、一定のルールが出来上がれば、企業同士、競争するのではなく、お互い意見交換することによってユニバーサルデザインの普及につながるというメリットもあるそうです。

 国際ユニバーサルデザイン協議会(略称:IAUD)は様々な企業が出資・参加し、日本最大の推進団体とされています。2002年に横浜で、国際ユニバーサルデザイン会議が開催されたのをきっかけに設立されました。現在は、日本のユニバーサルデザインを世界に発信、ユニバーサルデザインの普及などの活動を行っています。デザイナー、専門職、大学教授、学生など幅広い会員が在籍しており、会員の資格に制限はなく、様々な障害を持つユーザーも参加しているそうです。

 仁宮さんと高橋さんが手話化活動に取り組んだきっかけは、複写機や複合機を対象に、競合メーカー同士が協力して、ユーザーの立場にたってユーザーインターフェイスの共通化、統一化に向けた研究活動を行っている研究会がありました。その中に、手話用語を検討するワーキンググループ(以下、手話用語WG)を立ち上げ、コピー機関連用語を選定し、その手話案について検討する活動をしていました。その成果が日本手話研究所のHPに載っていますので、ご覧下さい。

 2012年3月、IAUD標準化研究WGのメンバーから、手話用語WGの活動をサブワーキンググループとしてIAUDの場での活動とすることについて打診があり、より大きな視点での手話創作の活動に発展させていくには、多くの企業が集うIAUDの場で議論することは大きな価値があると考え、手話用語WGは活動の場をIAUDへ移行されたそうです。仁宮さんと高橋さんが属する「手話用語サブワーキンググループ」は、「専門用語の手話化プロセスの確立・普及」「グローバルボディランゲージ」などのテーマのもとに活動されています。その中で聴覚障害に関する研究活動やワークショップも展開されています。

 そして去年11月に福島と東京で開催された国際ユニバーサルデザイン会議にて、「グローバルボディランゲージ」のワークショップの報告がなされました。2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に伴い、大勢の外国人が来日する、高齢者及び聴覚障害者も含めて言葉の壁が発生することが想定されます。聴者も機械音や騒音の環境においては一時的に聞こえにくい状態におかれることもあります。それに向けて、地震や津波、火事といった災害場面を想定し、日本語が通じにくい人や音が聞こえない人に対して、手話を使うというアプローチではなく、音に頼らない伝達方法とは何かと探るための試みとして、ワークショップを行いました。

 その結果、何が起きているのか情報を伝えるのではなく、状況は簡潔に伝え、「向こうに逃げよう」「階段を下りて行こう」と今取るべきアクションを伝える、そうすることによって、安心感を与えることができるといいます。また、腕を引っ張って誘導することも有効であると確認できたそうです。東京オリンピック・パラリンピックだけではなく、国際的なイベントや観光地、または日常生活においても活用できます。直感的でわかりやすいグローバルボディランゲージをこれからも追求していくとのことでした。

 「難しく考える必要はありません。相手にわかりやすく伝えるためにどうすればいいか考えることが大切です。皆さんも共に考えていきましょう。」と最後に投げかけてくださったメッセージが印象的でした。デザイナーとして勤めておられるだけではなく、ユニバーサルデザイン分野においても貢献しておられる先輩の活動や経験をお話し頂き、大変刺激を受けたのではないかと思います。

 参加してくださった皆様ありがとうございました!!


 

過去のニュース一覧へ

トップページへ戻る