筑波技術大学平成29年度公開講座「手話スキルアップ講座」

2018/02/14掲載

 2月4日(日)に本学天久保キャンパスにて、筑波技術大学平成29年度公開講座「手話スキルアップ講座」を開講しました。今回の講座は、手話による日常的な会話ができる手話学習者8名を対象に、習得が難しい分野とされる「類別辞構文」を中心にものの形や動き、指差しなどの説明の読み取りと表現のスキルアップをねらいとし、グループ活動の形で指導しました。ろう者学教育コンテンツ開発プロジェクトで開発している教材もこの講座で使用しました。

 講座の進め方ですが、セッション毎に、まず単語の手話表現の確認を行い、参加者1人ずつ映像の手話表現を読み取ってワークシートに解答を書いてもらいました。その答え合わせを行うとともに解説を行い、身につけるためのポイントを整理してもらいました。次に、今度は参加者にペアを組んでもらい、別のワークシートを用いてペア同士で手話表現し、読み取る練習を行う形で進めました。

10:00~12:30 前半セッション「ものの形や特徴、数、配置を正確に表そう」

 まず、導入ではCL(類別辞)構文について、手話表現における決められた手順【形→大きさ→場所(配置)】を守って表現すると分かりやすいということを説明し、皆で基本を確認してから、セッション1~4に進みました。

 セッション1では、まず様々なものの形(平面)の表現について、例えば、点、円、大きな円、線、3本並んだ線、細い線、太い線、×、ドーナツ型などの様々な形をどう表現するか、学習しました。そして、円形、正方形、長方形、三角形、星形などの表し方、さらに、それらの様々な形が横並び、または縦並びと並んでいる模様を説明する時にどう表すかも合わせて解説しました。ペア同士で実際に表現してみると表現が逆になってしまうこともあり、自分では表すのは良いが、相手に正確に伝わっているのか、振り返る良い確認にもなったようです。

 次のセッション2は、国旗の模様の説明表現を学習しました。まず、外の枠を表し、全体的な色(濃淡も含めて)を示してから、順番に細かい形や色を表す、または、縦か横に3色配置されている場合、順番に上からまたは左から色を表すなど、様々な説明パターンを習った上で、ペア同士で練習してもらいました。中でも、フィジー共和国の国旗のように紋章が入っているものもあり、どう表現しようか頭を抱えながらも一生懸命に伝えようとする様子も見られました。

 セッション3では、様々なものの形(立体)、例えば、円柱、立方体、三角錐、円錐、魚、電車・新幹線の顔の形などの様々な立体をどう表現するか学習しました。例えば、「細い」「太い」の表現は頬の膨らみの違いで表現するなどのポイントも解説しました。実際にペアで表してみると、「細い」「太い」の表現は読み取れるが、「短い」「長い」の表現が微妙に異なり、読み取りにくい、判断が難しいという声もありました。普段、意識しないところですが、それらの細かい表現ができるようになれば、表現の幅は広がりますね。

 セッション4では、セッション3の応用として積み木を使って指導を行いました。ペア同士で、片方が見えないように配布された写真が示す積み木の形、色、配置を表現し、もう片方がそれを読み取って写真通りに正確な配置をすることができるかを練習しました。相手が表現する右、左をそのまま表現された場所に置く人が殆どで、写真が示す左右の配置が実際は逆になることが多く見られました。相手が示す右、左は自分にとっての右、左と同じなのだと、改めて読み取り方についても確認をしました。

13:30~16:00 後半セッション「ものの動き、指差し、図解表現を正確に読み取ろう・表そう」

 後半のセッション1では、様々なものの動きの表し方、例えば、ボールの動き、人以外の動物の動きなどについて学習しました。手話表現動画を読み取ってワークシートに日本語で意味を書き、ペアで確認後、さらに2つの班ごとで確認し合って、ホワイトボードに各班の答案を書いてもらい、講評を行いました。「ぶつかる」の表現においても、「物と物がぶつかる」、「人と車がぶつかる」では表現が異なることや、「大きい」の手話表現はその表現の内容(表情、強さなど)によっては「激しい」という意味に変換されることを確認しました。

 セッション2は、場所に関する情報を指差しの使い分けで説明する方法について学習しました。指差しにも様々な指し方があり、一般的な指し方、全体の指し方、特定の場所一点の指し方があります。他と比較している「~には(~に)」とその場所に限っている「~は(~が)」の指差しの使い分けに難しいとの声が多く、表現に苦労する様子が見られました。難しいですが、指差しの使い方を使い分けることができれば、場所に対する自分の関わり方について微妙な違いを説明することができます。

 セッション3は、図解的な説明表現でした。今回は「テストの成績がクラスで一番ビリだったが、懸命に勉強して逆転して1位になった」「手話通訳の割合が東京と大阪では東京の方が多い」「レバー50gの当たりのカロリーは、牛は66kcal、豚は64kcal、鶏は55kcal。あまり変わらないね」の3つの内容の手話表現動画を読み取り、それをワークシート上で図や日本語に変換することをしました。最後は、「人形の足に横から来た白いボールがぶつかって、人形の体の向きが変わった」という内容の動画も流し、それをどのように手話で表現できるかというということもペアで考えるということをしました。状況を説明する人が人形になったつもりで、人形の特徴を伝え、それから、自分の足にボールが当たって、自分の体の向きが変わったという表現をすることで、ろう者にとってはイメージがしやすいということを確認しました。難しかったと思いますが、日本語を考える前に、頭の中で視覚的イメージを整理し、どのような表現を使うとより鮮明に伝わるか考えることで、良いトレーニングになったと思います。

 全体的に難しい内容だったと思いますが、慣れない表情を上手く使って何とか伝えようとする参加者の真剣なお姿が印象的でした。受講後、「内容がとても面白く、大変勉強になりました」「(手話の)読み取りができるか不安でしたが、分かりやすく表現してくださり、安心しました」との感想をいただきました。

 指導面で様々な課題もありましたが、ろう者学教育コンテンツ開発プロジェクトで作成した教材も活かして、有意義な手話学習の場を提供できたのではないかと思います。これからもより多くの方々に楽しんでいただける、分かりやすい講座の提供を目指してまいりたいと思います。

 参加してくださった皆さま、ありがとうございました!!

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